2010年3月1日月曜日

法案国会提出と閣議決定について

 外国人参政権に係る法案の国会提出が見送られることになった。かねてより亀井静香国民新党代表、金融・郵政改革担当相が党として、また、政治家個人として反対するとしていたため、法案提出に関する閣議決定のプロセスにおいて、事と次第によっては内閣不一致という事態となり、亀井大臣が「更迭」された上で他の国務大臣が後任として兼務し、当案件を閣議決定するというシナリオも無いわけではなった。
 その場合、国民に連立政権の担政能力の著しい欠如を露呈することになり、結局は「誰も得しない」結果となったであろう。一方、自民党も国会の場で審議する十分な用意と毅然としたポリシーも無く、単に民主党政権の問題にとどまらず、国家・国民主権に関わる大問題に発展していたことも想定される。今回は、そのような事態に陥らなかったことをよしとし、「閣議」について各種資料をもとにまとめることとする。(また、外国人参政権の問題については別途、論考することとする。)

○閣議とは(定義)

 閣議とは、内閣法によって、内閣が職権を行使するときに開催が義務づけられている、内閣総理大臣と国務大臣全員による会議のこと。内閣は、合議体であって、内閣の意思は国務大臣が閣議によって決めることを原則としている。(内閣法第4条で規定されたものだが、会議の手続きについては定めがなく、慣行によっている。)

○開催要項

 閣議には毎週火曜日と金曜日の午前中に開かれる「定例閣議」と、必要に応じて開く「臨時閣議」があり、原則として全閣僚が総理大臣官邸閣議室(国会期間中は国会内の閣議室)に集まって行われる。しかし、早急な処理を要する案件の場合には内閣参事官が閣議書を持ち回ってそれぞれの閣僚の署名を集めることにより意思決定とする場合がある。これを「持ち回り閣議」という。閣議は非公開(秘密会)が原則である。
 閣議は、総理大臣が主宰するが、実際の司会・進行は内閣官房長官が行う。 国務大臣が海外出張する時には、当該大臣の臨時代理が前もって決められる。
 閣議は円形のテーブル(*)で行われ、席次は省庁の設置順である。閣議の結論は、内閣官房長官を通じて外部に報告される。意思決定には参加できないが、内閣官房副長官と内閣法制局長官が陪席することになっている。

 (*)現在は首相官邸公式サイトに新・旧両首相官邸の閣議室の写真が掲載されている。現在の首相官邸閣議室は広さ約110平方メートルで、直径5.2メートルの円形テーブルが置かれており、通常は閣僚がこのテーブルを取り囲むように着席する(陪席の内閣官房副長官・内閣法制局長官は別テーブル)

○提出される案件種別

・一般案件(国政に関する基本的事項で、内閣としての意思決定が必要であるもの)
・国会提出案件(法律に基づき内閣が国会に提出・報告するもの)質問主意書に対する答弁書なども含む。
・法律・条約の公布
・法律案の決定
・政令の決定
・報告(国政に関する調査、審議会答申などを閣議に報告する)
・配布(閣議の席上に資料を配付する)

○決定事項の種別

 明確な根拠法に基づくものでなく、案件の重要性に応じた分類と慣習的に考えられている。閣議決定、閣議了解、閣議報告として処理され、どのような案件をどの決定形式にするかの規則が作られているわけではない。閣議の意思決定には「閣議決定」、「閣議了解」の2つがある。内閣としての意思決定を「閣議決定」、本来は主務大臣の管轄事項だが、その重要性から閣議に付された案件に対する同意としての意思決定を「閣議了解」と区別するが、その効力に差があるわけではない。

・閣議決定: 合議体である内閣の意思決定。閣議における案件処理のなかでは、最も重みを持つ。
・閣議了解: 本来主任大臣の権限に属する事項について、それらの事項の重要性を考慮したうえで、閣議に提出して他の国務大臣の意向も聞くことが適当と判断されたものについて行われる。
・閣議報告: 主要な審議会の答申や省庁の白書等を閣議で披露するような場合に行われる。

○閣議決定と文書の流れ
 
 憲法または法令に定められた、法律案・政令・予算など内閣の職務権限として明示された事項および他の重要な事項について行われる内閣の全員一致(*)による意思決定。もし、反対の意志を曲げない大臣がいた場合は、内閣総理大臣は閣議での議決を断念するか、その大臣をその場で罷免するかを選択しなければならない。

(1) 各省で特定の案件を閣議に提出することを求める閣議請議の文書を起案し、大臣が決裁し、内閣官房に送付する。
(2) 内閣官房(内閣書記官室)で送付された文書の案について国務大臣の署名欄のある用紙(閣議書)で起案し、閣議の席上で各国務大臣の署名(花押)を求める。
(3) 内閣官房(内閣書記官室)は、決定された内容について閣議を求めた省に通知し、政府の方針の決定のようなものであれば関係機関にも通知の書面を送る。

(*) 内閣が、「行政権の行使について、全国民を代表する議員からなる国会に対し連帯して責任を負う」(内閣法第1条第2項)ことに基づく。)

○その他

 定例閣議は各省庁から上がってきた書類への署名に精一杯なのが現状。閣議終了後、閣議で取り上げられなかった議題や国政の議論を「閣僚懇談会」などを設けて自由討論したり、情報交換を行ったりすることもある。閣議及び閣僚懇談会には、公式的な議事録はない。記録を残すと、外に出た場合、閣内不一致を指摘される恐れがあるからである。
 首相が入院したために、閣議を主催できない状態で首相臨時代理を指定しないまま定例閣議の時間を迎えた安倍内閣末期の場合、定例閣議に代わる閣僚懇談会が閣議進行役の内閣官房長官が主導する形で行われ、全閣僚が閣議書に署名した後で首相が入院先の病院で決裁する「持ち回り閣議」の手法をとっていた。
 鳩山由紀夫内閣の平野博文官房長官は、2009年12月1日の記者会見で、「閣僚間の忌憚ない意見交換ができる場だから作成していない」、「かならず記者会見などを行うことで透明性は確保される」と理由を述べ、公式的な議事録は今後も作成する予定はないとしている。
 また、閣議の効力についても、法律等の国会決議そのものではないので、国民の理解を得て世論が変われば、決定内容も絶対的なものとはいえない。

(首相官邸HP 閣議)
http://www.kantei.go.jp/jp/rekidai/1-2-5.html

(首相官邸HP 閣議案件)
http://www.kantei.go.jp/jp/kakugi/index.html

(kotobank.jp 新藤宗幸千葉大学法経学部教授 )
http://kotobank.jp/word/%E9%96%A3%E8%AD%B0

(北海道医師連盟 常任執行委員 中川俊男氏)
http://www.doiren.jp/key_kakugikettei.html

(wikipedia 閣議)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%A3%E8%AD%B0

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