2010年2月28日日曜日

Ⅲ 平成22年度予算について

 野党自民党の国会戦術の失敗と予算委員会審議への復帰により、週明けにも予算委員会での審議は終結し、平成22年度予算の衆議院本会議での可決、参議院への送付される見通しとなった。3月2日まで衆議院を通過すると、憲法の規定により、参議院で議決が行われなくても年度内に自然成立することとなる。なお、参議院で衆議院と異なった議決をした場合、衆議院は両院協議会を求めなければならないが、協議が成立しないときは、衆議院の議決が国会の議決とされることとなっている。

1.今年度の予算の編成・審議過程

 ・財政制度等審議会 財政制度分科会 建議(平成21年6月3日)
  -平成22年度予算編成の基本的考え方について
 ・概算予算基準閣僚会議了解(平成21年7月1日)
  -平成22年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について(閣議了解)
  -平成22年度一般歳出の概算要求基準の考え方
  -平成22年度概算要求概算要求のポイント
 ・平成22年度予算編成の方針閣議決定(平成21年9月29日)
  -平成22年度予算編成の方針について(閣議決定)
 ・各省庁の予算要求(概算要求)(平成21年10月15日)
  -マニュフェスト(「三党連立政権合意」を含む)を踏まえた平成22年度一般会計概算要求額(平成21年10月16日)
  -各府省の概算要求書及び政策評価調書(平成21年11月26日)
   1.概算要求の概要等
   2.概算要求書
    (1)一般会計
    (2)特別会計
   3.政策評価調書
  -平成22年度予算編成上の主な個別論点
 ・政府案閣議決定(平成21年12月25日)
  -平成22年度一般会計歳入歳出概算
 ・平成22年度一般会計歳入歳出概算の変更について(閣議決定)(平成22年1月22日)
  -平成22年度一般会計歳入歳出概算の変更について
 ・政府案国会提出(平成22年1月22日)
  -平成22年度予算書の情報
  -平成22年度予算政府案 
    
2.平成22年度予算のポイント

 ○平成22年度 一般会計予算フレーム
  「いのちを守る予算」3つの変革
  ・コンクリートから人へ
  ・政治主導の徹底
  ・予算編成プロセスン透明化

       21年度予算    22年度予算    差
(歳入)

 税収    46.1兆      37.4兆   ▲ 8.7兆
 その他収入 9.2兆      10.6兆     1.4兆
    
 公債金   33.3兆      44.3兆    11.0兆

 計      88.5兆      92.3兆    3.8兆

(歳出)

 国債費等   20.2兆      20.6兆    0.4兆
 
 地方交付税等16.6兆      17.4兆    0.9兆

 一般歳出   51.7兆      53.4兆    1.7兆
 
 調整資金繰戻          0.7兆    0.7兆

 計      88.5兆      92.3兆    3.8兆   

 ○主要経費の分類による予算の変化「コンクリートから人へ」

            21年度予算  22年度予算  差  伸率
 社会保障関係費   24.8兆    27.3兆  2.4兆 9.8%
 文教及び科学振興費  5.3兆     5.5兆  0.3兆 5.2%

 公共事業関係費    7.1兆     5.8兆  ▲1.3兆 ▲18.3%

 地方交付税交付金等 16.6兆    17.5兆  0.9兆 5.5%

 ○平成22年度 一般会計の歳出の構成

        21年度当初 %  22年度予算 %          
 一般歳出     51.7兆 58.4%  53.5兆 57.9%
  社会保障     24.8  28.0   27.3  29.5
  公共事業       7.1   8.0    5.8   6.3
  文教科学振興  5.3   6.0    5.6   6.1
  防衛           4.8   5.4    4.8   5.2
  その他        9.7   11.0   10.0   10.9
 地交税交付金等 16.6兆 18.7%  17.5兆  18.9%
 国債費       20.2兆 22.9%  20.6兆  22.4%

 ○マニュフェスト工程表の主要事項について
 
 -子ども手当 子供一人当たり月額13,000円(所得制限なし、児童手当法範囲で地方負担)
 -高校の実質無償化 公立高校(完全無料)私立高校(年額12万円助成)低所得上乗せ規定
 -年金記録 被保険者名簿等の紙台帳の精査 インターネット閲覧
 -医師不足解消 診療報酬本体の大幅プラス改定 急性期入院医療の医療費増額 救急・産科・小児・外科に重点
 -農業の戸別所得補償 モデル事業の定額部分の補償交付単価1.5万円/10a 変動部分を措置
 -暫定税率 当分の間維持
 -高速道路の無料化 社会実験を実施 段階的に進める
 -雇用対策 雇用保険の適用範囲を緩和

 ○マニュフェスト工程表の主要事項の財源確保
 
 -子ども手当        1.7兆
 -農業の戸別所得補償  0.6兆
 -高校の実質無償化   0.4兆
 -暫定税率        0.2兆
 -高速道路の無料化   0.1兆
 -年金記録         0.1兆
 -雇用対策         0.0兆(170億)
 計            3.1兆

 (行政刷新会議における事業仕分け等を通じて予算の全面的な組み替え実施)
 -事業仕分け評価反映  1.0兆
 -公益法人基金返納   1.0兆
 -要求段階での削減   1.3兆
 計            3.3兆

 ○税外収入について
 
   19年度当初  20年度当初  21年度当初  22年度当初
    4.0兆    4.2兆    9.2兆     10.6兆(過去最大)
 
 財投特会       4.8兆 
 外為特会       2.9兆
 その他        0.2兆
 
 公益法人基金返納   1.0兆
      
 ○平成22年度 我が国の財政事情
 
 (フロー)
 公債依存度      48.0%
 プライマリバランス▲ 23.7兆
   
 (ストック)
 公債残高     637兆(GDP比 134%)
 公的長期債務残高 862兆(GDP比 181%)     

3.課題

 民主党政権に移行し、予算策定のプロセスに事業仕分けなど新たな仕組みが導入されたことは一定の評価ができるが、このままでは構造的問題が解決されるばかりか、ますます国家財政が悪化し、国民社会生活に極めて深刻な悪影響を与える可能性が高まっている。その解決のために課題への対応策を明確にし、景気動向などを勘案しながら中長期のフレームワークの中で、具体的で実現可能と思われる目標値を設定し、今年度からでも補正予算も含めて施行していく必要がある。

 ○財政規律の方法論および方向性にかかるコンセンサスの形成
  成長戦略 
  消費税引き上げ
  年金保険料の引き上げ
  マニュフェスト実施優先順位および見直し

 ○予算策定プロセスのさらなる効率化
  事業仕分けの戦略的変更(範囲拡大・効果優先順位)
  結果検証の仕組みビルトイン
 
 ○新たな財源の確保
  政府資産や政府保有株の売り出し・民営化
  消費税引き上げ
  年金給付金引き下げ
  特別会計の抜本的な見直し・一般会計との整合性確保
  公務員制度改革によるスリム化・活性化
  議員定数の削減等政治の仕組みのスリム化

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