2010年4月25日日曜日

沖縄米軍基地移転問題について③

 「混迷を深める沖縄米軍基地移転問題」と書いた前回(1月30日)から3か月が経過し、鳩山首相が自ら設定した期限の5月が迫ってきており、解決はほぼ不可能というのがもっぱらの見方であるし、その通りだと思われる。ビジョンとリーダーシップのない組織の末路というべきか、日経は「政権末期」としての表現を用いるまでになっている。

1.問題の本質

 沖縄米軍基地移転問題② において書いた本質論をサマリーすると以下のようになる。
 
 ・日米合意の取り扱い:日米間で時間をかけて2005年に合意した「日米同盟:未来のための変革と再編」中間報告をどのように取り扱うか。政権交代したから当然「ゼロベース」で検討というが、国家間の合意・意思決定は外交および安全保障にかかわる事項では継続性が担保されるべき。この点において、鳩山政権がこの問題を政権交代時の「高揚」の中で一重に国内政治目線での議論をスタートし、方向付けに曖昧さとか目的に錯覚があった。

 ・普天間基地周辺の危険除去:名護市街地の中心部にある基地の飛行機・ヘリコプター発着による騒音や危険除去を行う必要があることが最重要ポイントでありコンセンサスであった。

 ・移転候補地の決定:環境アセスメントや地元の受け入れ合意には時間がかかるし、基本的にはかなり難易度が高いため、既存の自衛隊基地や米軍基地の役割変更が選択肢となる。

 ・単なる沖縄米軍基地の問題ではない:9.11以降の米国の軍事戦略の変更=グローバルなTransformationにおける位置づけ、今後の日米安全保障の在り方(在韓米軍基地の一部撤退を含めた米韓の軍事関係の変化)。軍事のIT化の進展と老朽既存兵器・装備のリプレースメントといった安全保障や軍事にかかる全面的な見直しの局面にある。

2.単なる日米安全保障上の問題ではなくなった

 こうした本質論を離れ、観念的で浅薄な言葉が躍る。曰く、「沖縄の美しい海を守る」、「5月までに結論を得る」、「最低限県外、できれば国外」などなど。また、閣僚や官房長官の思惑の違いによる発言の不一致、候補地選定や国内調整の段取りの悪さなどにより混迷の度は加速的に深まる。
 首相はこうした混迷を「積極的に」深める役割を果たしている。自分自身の発言が、一国の首相としてどれほど重いものかを認識していない、国民にとっては「耐えられない軽さ」が目につく。そして、この先のシナリオは当然首相交代ということにのだろう。つまり、沖縄米軍基地移転問題が首相退陣という国内問題にまでつながってしまったということ。郵政改革の後退や高速道路料金をめぐる錯綜だけでは首相退陣にまでは至らなかったのではないか。

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