2010年9月5日日曜日

民主党政権の一年を振り返る

 昨年8月30日の衆議院選挙の結果、国民は一種の「高揚感」を持って「政権交代」の歴史的現実を迎えていた。鳩山首相(当時)は、新しい政治=脱官僚を掲げ、国民第一、コンクリートから人への転換を高らかに宣言した。
 現在、9月14日の民主党代表選挙の真っただ中であり、可能性としては一年程度の間に3人目の民主党代表=首相が就任することもあるというタイミングであるため、この機会に民主党政権の一年を振り返ることとする。
 昨年の衆議院選挙では私自身も民主党に(それほどその担政力に期待も無く)投票し、自民党が二大政党制の中で古い体質を構造的に変革する機会としてほしいという気持を持っていた。だが、結論から言うと、想像を上回る民主党の迷走と担政力という実務能力の低さ、政党体質の劣悪さを目の当たりにし、うんざりしている。返す刀で、対極の自民党も長期的な低落傾向にも歯止めがかかっていない。
 大企業など自助により危機対応の検討や実行ができる主体は、根本的な戦略変更の選択を迫られた結果、そうせざるを得ないという地点に追い詰められているが、自助できない主体は「緩慢な自殺」に好むと好まざると得ずに進んでいる。そう、練炭をもって個室にこもり一酸化炭素中毒で自殺を図るように。ただ、これも意識した行動であれば自殺だが、意識をしていなければ事故死ということであるが。

○民主党政権下での振り返りポイント

1.民主党運営-小沢幹事長との二元構造と反発⇒迷走した
 【小沢幹事長室への権限集中と政調会の廃止から揺れ戻し】
 当初党運営は小沢前幹事長の完全なコントロール下におかれたが、鳩山前首相の抱きつき辞任で反小沢の枝野幹事長に交代したため、反作用として揺れ戻しが顕著となった。

2.財政・経済政策-公約を果たすことも対策も構造改革もできず⇒大きな禍根を残した
 【事業仕分けも新年度予算編成は92兆円規模に拡大】
 マスコミに受ける事業仕分けは、財政支出の無駄を切りだす一種の「見える化」であったが、公約の規模には全く至らず、重箱の隅をつついただけ。結局はバラマキ公約の実施により過去最大に肥大した予算と国債の発行となった。

 【経済問題(景気・株式市況・為替・失業)は何も対策が打てず】
 民主党内に目立った政策通もおらず、脱官僚を指向したため官僚には体の良いサボタージュの口実を与えることになり、無為無策に終始した。この部分の無作為という失策が一番罪が大きい。

3.国内政治の動き-連立政権の限界と参院選敗北による混乱⇒政治への絶望感が高まった
 【郵政改革法案の優先決議決定と先送り】
 連立を組む国民新党の主張により、郵政民意化を凍結する郵政改革法案も参議院選挙後の最優先決議議案とすることに合意したが、参院のねじれにより今度の方向性は混沌としている。小泉政権時に郵政民営化には賛成した国民の判断が生きているので、よりよいタイミングとやり方で民営化を進め行く余地が残っている点に希望がある。 連立政権の限界 (3月28日)


 【沖縄普天間基地移転問題をめぐる社民党の政権離脱】
 連立の社民党の主張に同調した鳩山前首相の友愛精神。ブレにブレた結果、当初案に回帰して、納まる鞘さえ失わせた不手際。前代未聞の未成熟な政治手法によって、結果として社民党は連立を離脱。国民は選挙によって社民党に政権を委ねたわけでは全くないのであるべき姿に回帰した。ただ、その爪痕は後述するが国益の厖大な棄損をもたらす結果となった。

 【在日外国人参政権問題】
 マスコミの表舞台では議論されておらず、それこそ「国民不在」の法案審議プロセスとなっていた。時間をかけた議論が必要であり、拙速は避けるべし。参院のねじれにより、この問題についての適切なプロセスが実現することは考え方によっては国民のバランス感覚の示現とも言える。 外国人参政権問題の論点 (3月5日)

 【宮崎県口蹄疫問題】
 舛添前厚労相下であった新型ウイルスの対応の「滑った転んだ」的な滑稽劇も困ったものだが、宮崎県口蹄疫問題は、国家の検疫に対する戦略のなさと危機管理体制のなさを露呈した。将来的な課題として、然るべき対応を平時から行っておかなければならない。日本の亜熱帯化等の気候変動によって、マラリア、デング熱等の風土病への罹患は避けられない現実として、危機対応と準備は万全に行っておくべき。

 【鳩山首相と小沢幹事長(いずれも当時)の辞任と菅首相への交代】
 普天間基地移転問題の迷走と政治とカネ問題で躓いた民主党トップ2の参院選挙対策としての辞任と菅首相への交代。ありとあらゆる失敗のパターンを繰り出してきた鳩山政権が早晩息詰まることは自明であったこと、また、当時の菅副総理・財務相はしたたかという見方をしてきたこともあり、この展開は当然のこととして受け止めた。ただし、鳩山政権を支えてきた副官としての政権の総括は全くなく、批判から入った政治手法に菅総理の野望と権力掌握の陶酔が露呈していた。その後は、期待された矢継ぎ早の政策の提示ではなく、前総理以下のガバナンス失墜の連続となっている。 政権交代の意味と現状 (2月25日)

 【参議院選挙での敗退】
 消費税の引き上げ議論を唐突に、また、野党である自民党の公約に抱きつく形でヘッジした姑息さと、一度口に出した政治家の言葉の重さを自覚しない覚悟のなさを突かれた。自ら副首相を務めていた政権の総括も無く、予算委員会における議論も端折って高支持率に掛けた短慮を恥ずべきである。また、国民の審判として受け止めるならば、何らも責任を取らない在り方については、大きな疑問である。選挙に落選した千葉法務大臣を継続して、「民間」大臣として職に当たらせるなど前代未聞の大失態である。反省がないということを世間に明確に示したということ。

 【非存在高齢者問題】
 実現形態は問わないが。国民背番号制(一体的なセキュリティ管理システム)を本格的に検討し、3年間で実現すべし。管理社会として自由主義的な観点からは批判もあるが、個人情報の保護を制度的にしっかりと設計し、老齢者の管理を国家的に行っていかなければならない。限界集落の問題などとあわせて国家レベルで検討する課題であり、各家庭の問題として矮小化してはならない。

 【おまけ:鳩山首相Twitterでのつぶやき】
 大衆迎合の究極で失策の一つ。オバマ米大統領との比較でいうと、選挙活動中から情報発信として活用しているならば救いはあった。一国の代表のコミュニケーションはSNS的に成り立つわけでもなく、これを演出した電通のサトナオさんの手柄となっただけ。

4.国際政治-世界に例をみない高頻度の首相交代⇒日本の国際的地位は確実に低下

 【沖縄普天間基地移転問題】
 鳩山前首相の思いつきと自作自演の下手芝居によって、すべてのシナリオが狂った。沖縄県民を愚弄した罪、日米安全お保障を基礎とする日米関係と延いてはアジアの安全保障のバランスに変調を生じさせた罪は、時間の浪費とともに国益の厖大な棄損をもたらした。

 【韓国海軍軍艦の沈没】  日米関係の軋みに同期して北朝鮮の冒険主義、中国の拡張主義傾向が明確になってきている。米国と韓国の大規模な合同演習の実施や台湾への戦闘機等武器輸出は陰画のように、国際政治の織りなす陰陽の絵模様である。国連中心主義も中国が拒否権を持つ安全保障理事会の常任理事国であるかぎり限界があることを認識するのが当然で、そうでなければよほどのお人好しである。国際社会は国益と国益のぶつかりで、近所住民の人間対人間のような良好な関係を常時維持できるほど成熟していない。
 
 【韓国航空機爆破犯人の金賢姫元死刑囚来日】
 北朝鮮の核問題・拉致問題は、日本の未解決政治課題の一つとして大きな問題である。金生日総書記の権力移譲のタイミングでもあり、今しかできない骨太の政治交渉はあり、これは国内政治問題とは切り離して、自民党との協働して取り組んでいくような国家をあげての姿勢でないと通じない。(この点でも朝鮮労働党と友党関係の社民党が連立を離れたメリットは大きい)

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