2010年1月30日土曜日

沖縄米軍基地移転問題について②

 混迷を深める沖縄普天間の米軍基地移転問題。1月18日の小論に続いて論説をまとめた上で、鳩山首相が言明した5月やバマ米大統領の訪日が想定されている11月までの政策決定につながる提言としよう。

1.在日米軍基地の再編の背景 - 単なる沖縄の問題ではない

  唯一のスーパーパワーとしての地位を強めた1991年のソ連崩壊と冷戦構造の終結や2001年9月11日の米国同時多発テロの発生により、2001年以降、米国は従来の軍事戦略・防衛に関する枠組みを大幅に見直す必要が生じた。この背景には、イラクの大量破壊兵器問題やアフガニスタンにおける駐留継続の中、人的被害を抑制するためのITの活用など軍事技術の進展もある。2001年以降、米国防総省は、Transformationとして、米国軍配置を世界的な観点で見直す作業に着手。軍事的に不安定な地域(不安定の孤)に対する即応体制を主眼とした再編を進めてきている。その「孤」を形成する東シナ海・北朝鮮・ 中台海峡などアジア地域の軍事戦略は世界的戦略の柱の一つであり、その潜在的な脅威としては、社会主義国として軍事プレゼンスを拡大する中国および核保有の野心を隠さない北朝鮮が引き続き定義されている。この脅威に対応しつつも、米軍のトランスフォーメーションを円滑に遂行することは、日本および韓国やフィリピンにおける在留米軍基地の最適な再編・縮小を実現することであり、単なる撤退といった誤った政治的なメッセージを生まないようにしなければならない。

2.「日米同盟:未来のための変革と再編」中間報告の合意

 日米両国は2005年10月29日に米国防総省において、外務・防衛担当の4閣僚による日米安保協議委員会(2プラス2)を開催し、在日米軍と自衛隊の再編についての基本的な考えかたや当面の二国間の安全保障・防衛協力での態勢強化に不可欠な措置をまとめ、「日米同盟:未来のための変革と再編」として中間報告として大枠合意した。米国側は、中間報告という位置づけではなく、基本的な合意で変更の余地はないという理解であり、自民党から民主党への政権交代によって中間報告にすぎないという議論のすり替えに妥協する可能性は低い。この合意の意図は、国内基地規模の縮小と再編、共同訓練等の強化や共同戦略展開の方向性である。

 【主な合意内容】

○沖縄県
・普天間飛行場
 普天間飛行場を日本側に返還するために代替施設を2014年までにキャンプ・シュワブ海岸線陸上部 と大浦湾海域にまたがった地域(名護市、辺野古沿岸)に建設する。周辺集落上空を飛行ルートから外すため、2本の滑走路がV字状に設置される(図参照)。各滑走路は1,600mとなる予定。普天間飛行場は代替施設が完成後返還される。
・第3海兵遠征軍
 2014年までに、第3海兵遠征軍司令部。第3海兵師団司令部、第3海兵役務支援軍司令部、第1海兵航空団司令部、第12海兵連隊司令部等約8,000人及びその家族約9,000人をグアムに移転する。家族住宅を日本負担で約3,500戸建設する。グアムに建設される施設の整備費102.7億ドルのうち、日本側が60.9億ドルを支出する。
・キャンプ桑江
 全面返還。
・キャンプ瑞慶覧
 一部返還。
・牧港補給地区
 全面返還。
・那覇港湾施設
 浦添埠頭地区に新施設を建設し移転する。その後、全面返還。
・陸軍貯油施設(第1桑江タンク・ファーム)
 全面返還。普天間飛行場代替施設の桟橋に貯油施設を建設する。
・自衛隊
 陸上自衛隊-キャンプ・ハンセンで訓練を行う。
 航空自衛隊-嘉手納飛行場で日米共同訓練を行う。

○神奈川県
・キャンプ座間
 キャンプ座間(相模原市、座間市)へ、2008年度までに米陸軍第1軍団(米ワシントン州)をUEx:Unit of Employment Xに改編して移転。http://www.rimpeace.or.jp/jrp/riku/zama/uex.html 2012年までに陸上自衛隊中央即時集団司令部も朝霞駐屯地から移転する。チャペル・ヒル住宅地区のうち、1.1ヘクタールを住宅移設後に返還する。
・相模総合補給廠
 相模総合補給廠に戦闘指揮訓練センターを新たに建設する。小田急電鉄多摩線を延伸し、鉄道を平行して道路を建設するため、2ヘクタールを返還。西側の野積場(52ヘクタール)のうち、15ヘクタールを返還。35ヘクタールを地元との共同使用とする。
・厚木飛行場
 厚木基地へ岩国基地の海上自衛隊のP-3C等が移転する。

○東京都
・横田飛行場
 航空自衛隊航空総司令部を米軍横田飛行場(福生市、立川市など5市1町)に移転し、第5空軍司令部と併置する。日米統合運用調整所が設置された。日米両政府は、横田空域の管制権返還、飛行場の軍民共同使用について検討する。

○山口県
・岩国飛行場
 厚木基地の第5空母航空団(空母艦載機のF/A-18Cレガシー歩―ネット、F/A-18Fスーパーホーネット、EA-6BプラウラーおよびE-2Cホークアイ飛行隊)を岩国基地に移転。
 普天間飛行場の空中給油機KC-130ハーキュリーズは、飛行隊司令部、整備施設等とともに、岩国飛行場へ移転する。海上自衛隊鹿屋基地(鹿屋市)、グアムへ定期的にローテーション展開する。

○全国
・嘉手納飛行場、三沢飛行場、岩国飛行場における米軍の航空機訓練を千歳基地(千歳市)、新田原基地(新富町)、百里基地(小美玉市)、小松基地(小松市)、築城基地(行橋市)、三沢飛行場(三沢市)の6基地の自衛隊施設で行う。

3.沖縄米軍基地の全貌と普天間・辺野古
 
・沖縄における米軍基地
 沖縄の平地部の7割を占めるという米軍基地の全体像は以下の地図で

column/


・辺野古沖基地















4.結論に向けての考慮点

  もつれにもつれた、Gordian Knot(ゴーデァン・ノット)を一刀両断に解決することは不可能と思われるが、顧慮点を以下にあげてみる。

 (推進論)
 ・日米安保条約に基づいた平和と繁栄の実績
 ・日米両国は長期間(13年)をかけて基本方針として合意
 ・米国のグローバルな規模でにすでに展開している軍事戦略の一環
 ・代替策(基地受入地方自治体)がない(検討時間もない)
 ・代替策はコストがさらに嵩む可能性

 (反対論)
 ・在日米軍の趨勢的な国外撤退戦略の推進(対等な関係の樹立)
 ・連立政権における社民党の強硬な反対と連立維持
 ・反対派の稲嶺氏を24日の市長選(民主・共産・社民・国民推薦)で選出した名護市民の民意
 ・辺野古はジュゴンの生息地とする自然環境保護

5.展望

 鳩山首相は、オバマ大統領との信頼関係が確立できていない状況となっており、また、自らの政治献金問題、小沢民主党幹事長の政治資金問題等により、政権樹立時の民主党および鳩山首相の支持率が急速に低下してきている。「5月まで結論を得る」との言明も、平野官房長官の迷走も含めて、コントロール・タワー不在の中で道筋が見えていない。小沢幹事長もその剛腕発揮を封じ込められている。
 このような中で鳩山首相は、28日に「普天間基地の継続使用は選択肢としてない」と、自ら最後の妥協的選択肢をつぶしてしまった。ということで、残された選択肢は2つで前者の可能性が高い。(軍事評論家の田岡俊次氏の佐世保付近移転案を追記:1月31日)
 
 (選択肢)

 ○現行案で着地

 ・来年度予算を今年度中に可決したタイミングで社民党を切り捨てる形で現行案に揺れ戻す
 ⇒
  7月の参議院選挙では自民党はこの線では攻勢に出れないためダメージは少ない
  (社民党を政権与党として選択としたという意識は国民にはない)
  沖縄県民感情は最悪の状態となるが、計画の一部縮小や公共事業投資効果で反感を抑制

 ○普天間基地の継続使用
 
 ・首相が自らの発言を撤回し、結論の先送りとなる八方美人策で丸く収めとようとする
 ⇒
  自民党のみならず民主・社民の与党内からも厳しい批判が続出し、首相は引責辞任する

(追加:軍事評論家の田岡俊次氏の提言)

 ○佐世保付近へ再編

 ・第3海兵遠征軍8000人のグアム移転後も沖縄に残留する歩兵第4連隊、ヘリ部隊第36航空群を佐世保南の大村航空基地近辺への移転
 ⇒
 ・佐世保基地北西約6キロ地点の陸上自衛隊相浦駐屯地(島嶼防衛を専門とする西部方面総監
 部直轄の普通科歩兵連隊が駐屯)への歩兵第4連隊を移転
 ・普通科連隊はその替りとしてキャンプ・シュワブに移転
 (環境影響評価進行中)

http://webdacapo.magazineworld.jp/

2010年1月25日月曜日

自民党は今何をなすべきか②

 自民党が24日党大会を開催し、谷垣禎一総裁は政権奪還に向けた結束を訴え、「常に進歩を目指す保守政党」と党の性格を定義した2010年綱領を了承した。「一部の人間が利益を分配して権力闘争に明け暮れる自民党とは訣別する」という、このタイミングでは最も古い自民党的体質を温存する民主党小沢幹事長のアンチテーゼとなるようなイメージ戦略を提起し、下記の綱領を掲げている。

 【自民党2010年綱領の柱】

 ■ 国民の自立心を損なう社会主義的政策を採らない
 ■ わが党は常に進歩を目指す保守政党である
 ■ 日本らしい日本の姿を示し、世界に貢献できる新憲法制定を
 ■ 自助自立する個人を尊重し、共助・公助の仕組みを充実
 ■ 地域社会と家族の絆・温かさを再生する
 ■ 財政の効率化と税制改正により財政を再建する
 ■ わが党は誇りと活力ある日本像を目指す
 ■ すべての人に公正な政策を実行する政府
 
採点が難しい。限りなく0点に近い。この綱領で政権は奪取できないことは間違いない。綱領に盛られた文脈において政策として具体的にイメージできるのは「財政再建」だけである。

 それでは、どのようにビジョンを掲げるべきか、以下に考え方をまとめてみよう。
 
1.期間の考え方

 3年半後の衆議院総選挙を視野に24か月連続計画を策定する

2.綱領に盛り込むメッセージ-10カ条

 (社会主義的政策をとらないなど、自明のテーゼは全く不要)

 ■ 日本の良いところをより伸ばす新保守主義
 ■ 国際社会における共存的発展を目指す国際協調主義
 ■ 新しい日本の在り方を定義する日本国憲法の改正
 ■ 地域経済の安定化・活性化につながる道州制(広域行政)の導入
 ■ 経済活性化のためのイノベーション関連の法人減税と助成制度
 ■ 長期的に安定的財政が担保できる税制改正
 ■ 国会議員の段階的で大幅な定員削減(参議院の制度抜本見直し)
 ■ 行政・公務員改革による効率的で透明な政府の確立
 ■ 少子高齢化への対応および各種教育制度等の充実
 ■ 責任政党としての持続的な改革・担政力の涵養

3.党内改革について

 派閥・長老的政治の打破
 年功議員は党幹部職として政策立案サイドへの転進か引退
 世襲の弊害の打破(親族の地盤は直接には継げない仕組み)
 民間・官僚との交流の活性化と登用
 政権構想ネットワークの構築
 党員拡大のKPIの設定
 政党助成金の効率的な活用
 政調会の所属ローテーションの活性化・部会再構成・戦略スタッフの外部化
 広報戦略の再定義(訴求するターゲット別支持拡大策の策定)

2010年1月23日土曜日

自民党は今何をなすべきか①

 落日の自民党は、民主党の自滅に近い敵失に有効な策を打てていない。その遠因は、第45回衆議院議員総選挙の惨敗の責任をとって辞任した総裁麻生太郎の後任を選ぶべき総裁選において惨敗原因の総括などの現状認識を党として共有しようとしなかった点にある。安倍・福田内閣と続いた政権の投げ出しがあり、国内経済の疲弊および二極化の進展に加え、リーマンショックに端を発する世界金融恐慌の勃発に適切に対処できていない状況となっていた。

 そのような厳しい環境であるにもかかわらず、麻生首相の耐えられない「物の言いの軽さ」、閣僚の不祥事と続き、国民はついに長期間にわたった自民党政治にとって代わる新しい政治原理を求め、民主党の歴史的な大勝が導かれたということである。ただし、これは消極的選択という意味合いもあり、国民の大部分は経験不足の民主党を実力・経験のある野党として矯正しうる自民党、二大政党制による安定を望んでいた。

 そのような現実に直面しても、自民党の動きは鈍く、ある意味支離滅裂となった。舛添要一氏、小池百合子氏、石原伸晃氏、石破茂氏などの総裁選経験者や有力閣僚の不出馬や出馬断念が続き、党の再生を目指す力学よりも「旧政権政党的」な人事力学を優先してしまった。その結果、谷垣禎一氏、河野太郎氏、西村康稔氏の三つ巴となったが、選出されたのは安定的とはいえ世代交代の意味合いのもっとも少ない谷垣氏であり、氏の「みんなでやろうぜ」の空虚な掛け声にもかかわらず、短期的には世代交代もなく党再生の可能性も低くしてしまった。この過程で印象的な映像が二つある。一つは麻生氏の辞任を受けて開かれた会議で両議員総会会長の若林正俊氏を首相候補することが決議されたが、その際に麻生元総裁が浮かべたうすら笑いなど耐えられない浮薄さ。もう一つは総裁選挙中の札幌の街頭演説の際に総裁候補の河野洋平氏が町村信孝氏に「あまりに調子に乗って跳ね返るなよ(覚悟しておけ)」との恫喝。

 自浄作用を失った干潟には生物は住まない。中選挙区制度がはぐくんだ派閥を住処とする豊かな人脈からなる自民党の復活はしばらく期待できない。

日米安保 21世紀的深化

 日米安全保障条約改定の署名50周年にあたって、日米の外務・防衛担当の4閣僚が共同声明を以下の通り発表した。首脳共同声明とならなかったのは、在日米軍基地問題等において信頼関係の構築が困難な状態であったため見送られてる。前日に発表された鳩山首相の声明と併せて読むと官僚の作文の特徴である「整合性」と「概要と詳細」の構図が読み取れる。外務省および防衛省官僚による共同作業としては現時点では成功裏に推移し、今後5月までに策定される基地移転問題をリードすることになろう。「同盟に対する国民の強固な支持を維持していることを特に重視し」、その方向性の中で戦略・施策の構築や世論の形成が企図されている。
 また、この声明のなかで明示されている「脅威」は、それらしく修辞されているものの「中国」、「北朝鮮」、「テロ」、「海賊」、「自然災害」となっている。鳩山首相の指向する「中国との関係強化」はその補完するものであるが、日米安保条約の存在を前提にしては、優先順位は逆転するものではない。鳩山首相とオバマ大統領との共同声明としなかったのは前述のニュアンスによるものと理解するが、穿った見方をすれば、今後の各首脳の退任を織り込んで、普遍的な関係強化を官僚的普遍性において担保しようとするものとも思える。

 (共同声明全文)
 日米安全保障条約改定の署名の50周年に当たり、日米安全保障協議委員会の構成たる閣僚は、日米同盟が日米両国の安全と繁栄とともに、地域の平和と安定の確保にも不可欠な役割を果たしていることを確認する。
 日米同盟は日米両国が共有する価値、民主的理念、人権の尊重、法の支配、そして共通の利益を基礎としている。日米同盟は過去半世紀にわたり、日米両国の安全と繁栄の基礎として機能してきており、閣僚は日米同盟が引き続き21世紀の諸課題に有効に対応するよう万全に期して取り組む決意だ。
 日米安保体制はアジア太平洋地域における繁栄を促すとともに、グローバル及び地域の幅広い諸課題に関する協力を下支えするものである。閣僚はこの体制をさらに発展させ、新たな分野での協力に拡大しておくことを決意している。
 過去半世紀の間、冷戦の終焉及び国境を越えた脅威の顕在化に示されるように、国際的な安全保障環境は劇的に変化した。アジア太平洋地域において不確実性・不安定性は依然として存在しており、国際社会全体においてもテロ、大量破壊兵器とその運搬手段の拡散といった新たな脅威が生じている。
 このような安全保障環境の下、日米安保体制は引き続き日本の安全とともにアジア太平洋地域の平和と安定を維持するために不可欠な役割を果たしていく。閣僚は同盟に対する国民の強固な支持を維持していくことを特に重視している。
 閣僚は沖縄を含む地元の基地負担を軽減するとともに、変化する安全保障環境の中で米軍の適切な駐留を含む抑止力を維持する現在進行中の努力を支持し、これによって安全保障を強化し、同盟が引き続き地域の安定の礎石であり続けることを確保する。
 日米同盟はすべての東アジア諸国の発展・繁栄のもととなった平和と安定を東アジアに提供している。あらゆる種類の顕在化する21世紀の脅威や地域およびグローバルな継続的課題に直面する中、日米同盟は注意深く、柔軟であり、かつ対応可能であり続ける。この地域における最も重要な共通戦略目標は日本の安全を保障し、この地域の平和と安定を維持することである。日本及び米国はこれらの目標を脅かし得る事態に対処する能力を強化し続ける。
 日本と米国は北朝鮮の核・ミサイル計画による脅威に対処するとともに、人道上の問題に取り組むため、日米で緊密に協力するとともに6者会合を含む国際的な場を通じて日米のパートナーとも協力している。
 閣僚は中国が国際場裡において責任ある建設的な役割を果たすことを歓迎し、日本及び米国が中国との協力関係を発展させるために努力することを強調する。
 日本及び米国はまた、アジア太平洋地域における地域的協力を強化していく。日本及び米国はこの地域及びそれを超えて自然災害に対処し、人道支援を行っていくために協力していく。日本及び米国は変化する安全保障環境の中で、共通の利益を有する幅広い分野において、米軍と日本の自衛隊との間の協力を含め、協力を深化させていく。
 閣僚はグローバルな文脈における日米同盟の重要性を認識し、さまざまなグローバルな脅威に対処していく上で緊密に協力していく決意であることを改めて確認する。日本及び米国は必要な抑止力を維持しつつ、大量破壊兵器の拡散を防止し、核兵器のない世界の平和と安全を追求する努力を強化する。
 日本及び米国は国際テロに対する闘いにおいて緊密に協力することも決意している。日本と米国による現在進行中の海賊対処に関する取り組みと協力は航行の自由と船員の安全を維持し続けるために不可欠である。
 日米安保条約改定署名50周年に当たり、閣僚は過去に日米同盟が直面してきた課題から学び、さらに揺るぎない日米同盟を築き、21世紀の変化する環境にふさわしいものとすることを改めて決意する。このため閣僚は幅広い分野における日米安保協力をさらに推進し、深化するために行っている対話を強化する。
 日本及び米国は国際的に認められたあ人権水準、国際連合憲章の目的と原則、そしてこの条約の目的、すなわち相互協力及び安全保障を促進し、日米両国の間に存在する平和及び友好の関係を強化し、民主主義の諸原則、個人の自由及び法の支配を擁護することに改めてコミットする。


 

2010年1月19日火曜日

日米安保改定50年に寄せて

 鳩山首相が19日、日米安保条約改定署名50年にあたり以下の談話を発表した。

 ☆★☆★☆★☆★☆

 日本と米国との間の相互協力及び安全保障条約(日米安全保障条約)は、1960年1月19日にワシントンで日米両国の代表によって署名が行われた。本日はそれから50年の節目を迎える日だ。
 日米安保体制は我が国の安全のみならず、アジア太平洋地域の安定と繁栄に大きく貢献してきた。我が国が戦後今日まで、自由と民主主義を尊重し、平和を維持し、その中で経済発展を享受できたのは、日米安保体制があったからと言っても過言ではない。
 過去半世紀の間、冷戦の終結や9・11テロなど、世界の安全保障環境は大きく変化したが、我が国をとりまく安全保障環境は北朝鮮の核・ミサイル実験に見られるよう厳しいものがある。こうした中、現在及び予見し得る将来、日米安保体制に基づく米軍の抑止力は、核兵器を持たず軍事大国にならないとしている我が国がその平和と安全を確保していく上で、自らの防衛力と相まって引き続き大きな役割を果たしていくと考える。
 また、日米安保体制は、ひとり我が国の防衛のみならず、アジア太平洋地域全体の平和と繁栄にも引き続き不可欠であるといえる。依然として不安定、不確実な要素が存在する安全保障環境の下、日米安保条約に基づく米軍のプレゼンスは、地域の諸国に大きな安心をもたらすことにより、いわば公共財としての役割を今後とも果たしていくと考える。
 こうした認識に立ち、私は50周年を記念する年にあたり、日米安保体制を中核とする日米同盟を21世紀にふさわしい形で深化させるべく米国政府と共同作業を行い、年内に国民の皆様にその成果を示したいと考える。

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 かなり完成度の高いコメントである。官僚の作文ではなく、首相自身の信念と本心に基づくものであることに少なからぬ懸念はぬぐえないが。

 在日米軍基地については、日米安全保障条約に基づく安全保障体制の「要」となっている。ただし、1991年のソ連崩壊による冷戦終結や2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件後の安全保障環境の変化、軍事技術の進歩に対応し、米国防省は冷戦型の米軍配置を世界的に見直す作業に着手。その一環として自衛隊と在日米軍の役割分担や在日米軍基地の再編について協議を重ねてきた。
 その後、日米両国は米国防総省で2005年10月29日、外務・防衛担当の4閣僚による日米安保協議委員会を開催し、在日米軍と自衛隊の再編について基本的な考え方や当面の二国間の安全保障・防衛協力で態勢強化に不可欠な措置をまとめた中間報告「日米同盟:未来のための変革と再編」で合意、再編計画の大枠を固めた。報告書は、自衛隊と在日米軍の連携強化と、基地負担の軽減対策を盛り込むと謳っている。

 首相が言う「日米安保体制を中核とする日米同盟の深化」の方向性は、「アジア太平洋地域における平和と繁栄に引き続き不可欠である」在日米軍のプレゼンスによるところが大である現状認識をしっかりと共有し、その50年の協働の実績に基づく「信頼」をさらに強化することにある。つまり、これをもって「トラスト・ミー」が正しく意味するということである。

 ただし、環境変化や軍事技術の進化も大きく考慮していく必要があり、1995年配備以降、ボスニア、アフガニスタン、パキスタン、イラクおよびイエメンで作戦に参加した「無人攻撃機プレデター」などの有効性を勘案すると、大型原子力空母や海兵隊を中核とした陸海同時展開などの軍事戦略は古臭いものとなってしまうかもしれない。当然、戦争を肯定的に推奨する人はいないわけでこのような効果的抑止力を維持しつつ、イデオロギーの対立や国益のぶつかり合いがあっても交渉と妥協によって平和的に解決していくという安全保障の王道も忘れてはならない。

 つまり、日米安保条約の第二条には、「締結国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによつて、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締結国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。」とあり、単に軍事に基づく同盟関係という位置づけから昇華させ、国際社会における平和の増進、友好関係の促進を経済的な協力をもってあたるという成熟した関係を目指している。

 今後は朝鮮半島の軍事・経済社会的な安定も意識し、日・米・韓の安全保障条約も視野に入れた国際戦略を策定していかなければならない。このトライアングルにおいて、社会主義国である中国や北朝鮮など不安定要素を効果的かつ相互扶助的に緩和していくことになり、三国それぞれのメリット、「三方一両得」の構図を作っていくことで、はじめ21世紀にふさわしい安全保障体制の深化ということができる。  

2010年1月18日月曜日

沖縄米軍基地移転問題について①

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移転受け入れの是非を問う、沖縄県名護市の市長選が17日に告知された。24日に投開票。過去3回は容認派が当選。米軍キャンプ・シュワブ沿岸部(名護市辺野古)を移転先とした日米合意の履行をどのように修正していくか。

 ○現職再選:島袋吉和氏(63・無所属)、自民・公明両党が支持、受入容認
  →県(仲井真弘多知事)と連携、13年の検討の経緯に基づいて計画を進める

 ○新人:稲嶺進氏(64・無所属)、民主・共産・社民・国民推薦、受入反対
  →前市教育長として、市政刷新や教育・福祉の充実。「市民目線の街づくり」

 米軍の日本駐留の継続の必要性については、極東の「軍事的安定の要」として機能してきた日米安全保障条約の50年間の実績とともに評価しなければならない。(1951年の日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約=旧安保条約からは約60年)
 現在、極東におけるロシア(旧ソ連)の軍事的な脅威は冷戦時よりも大幅に減退しているものの、中国および北朝鮮の拡大主義や冒険主義的な軍事リスクは引き続き存在するという認識から、質的変換を求める検討を行いつつも、引き続き日米安全保障条約の堅持と在日米軍基地の継続は国益に合致すると考える。
 市長選で稲嶺氏が勝利した場合、鳩山首相はさらにリーダーシップを発揮すべきまさにそのタイミングにおいて優柔不断さを露呈せざるを得ないだろう。最終的は米軍の国外退去を「希望」しているということだが、現時点では野党時代の無責任論は与党として国益を代表する立場になると封印せざるを得ないという判断をしている以上、名護市長選で国家の外交戦略を諮るという建てつけにしてしまった矛盾はどうしようもない。
 国民は社民党や国民新党に政権を委ねたわけではない。今後の日米安全保障にかかる方向性の検討は新安保50周年を機にしっかりと進めつつも、キャンプ・シュワブ沿岸部への基地移転と集約化、段階的縮小化に向けた中中期アクションプランを提示すればよい。この際、軍事技術のハイテク化や情報化もあり、旧来の海兵隊ロジックに基づいた基地運営ばかりではないビジョンも協働して策定するべきではないだろうか。

2010年1月17日日曜日

通常国会開催

1.通常国会とは

 1月18日に第172回通常国会が召集される。国会法に規定されている通り、国会には通常国会・臨時国会・特別国会の3種類があり、いずれも内閣が召集を決定する。通常国会は毎年1月に召集され、次年度の国家予算やその予算を執行するために必要な法律案を中心に審議する。会期は150日で、延長できるのは1回だけ。参照:http://bit.ly/6A1B9G (Business Media 誠より)

2.議論のポイント
 今回の国会は民主党政権後初の通常国会となり、平成22年度予算が審議・承認されることになる。昨夏衆議院選挙において民主党がマニュフェストとして掲げた政策の実現可能性を測る初年度としての「基本的な方向性」を国民として確認しなければならない。
 また、この際の議席で過半数を占める連立与党の国会運営の手法についても、その巧拙やプロセスも吟味しなければならない。マスコミの報道も偏向傾向も強まっている中、国家運営の基盤であり、立法府としての国会がどの法律をどのように審議・承認するかを冷静に合理的評価する必要がある。
 この判断を今夏の参議院選挙に反映させ、中長期的な国家運営が安心でき・安定期なものとするように努めるのは国民の義務である。

 予算関連の議論
 -マニュフェストを反映した施策、「コンクリートから人へ」の実現
 -税収の減収傾向と国債発行水準の高止まりによる財政の危機的状況の打開
 -成長戦略の実現性の予算的な担保と考え方の提示

 政治と金に絡む議論
 -小沢民主党幹事長の政治資金処理に関する疑惑
 -鳩山総理の行政を司る立場としてのこの問題に対処するスタンス

 民主主義の根幹に係る議論
 -外国人参政権法案における地方自治の在り方に関する審議

 外交に係る議論
 -日米安全保障条約改定の調印50周年(1月19日)と沖縄米軍基地移転に係る方向性

3.予想
 マスコミとしては小沢幹事長の政治資金問題に焦点を当て、退任するかどうかの報道合戦となろう。そして、これにより国民生活の安定や経済再生を企図する予算審議や地方自治における外国人参政権の是非等の各項目の国民的コンセンサスの形成の機会を減じることになろう。
 悲観的な観測ではあるが、民主主義的多数決のプロセスをどのように行使するかという形式論はあるが、過半数を占める与党による法案成立は自然の流れと考えるべき。鳩山首相も「このような問題があったとしても国民から選ばれた政権である」として位置付けており、それを覆す世論の高まり(マスコミ等の正常機能としての役割発揮)がなければ、ベルトコンベアー的に今後の4年間が進んでいくことを覚悟する必要がある。
 さらに世論の高まりがあっても、問題点のすり替えは起こりえる。小沢幹事長が「党職」としての責任をとり幹事長辞任を引き換えに予算その他法案を通すというシナリオである。自民党の完全殲滅の「布石」は打たれているため、自らを例によって捨てることにより、大石を固めていくというやり方は、小沢流と考えれば不思議はない。管副総理が次期総理・総裁候補として、小沢リモートコントロールの手筋に入った以上、このシナリオとなる可能性が高い。この場合。参議院選挙の結果如何によらず民主党政権の基盤は強化され、長期政権となるだろう。

4.その他
昨年の第171回通常国会はまとめがWikipediaにあるが、今後政権交代の意味も含めて参考にする必要がある: http://bit.ly/912aEp

日本政経塾の発足にあたって

【設立の趣旨】

- 世界における日本の現状および将来を鑑み、あるべき政治経済の戦略・政策・施策を検討し、実現可能な提言として体系的に構成する
- 広く政治経済に係る議論を興し、国民経済社会の活性化に資する
- 若い世代を育成するプログラムを構築する
- 価値感を共有する人的ネットワークを形成する

【構成】

1.政治
2.外交
3.防衛
4.地方自治
5.金融経済
6.文化教育
7.法律
8.科学技術
9.制度

(御参考)内閣・官庁の体系
http://www.kantei.go.jp/jp/link/server_j.html