2010年1月23日土曜日

日米安保 21世紀的深化

 日米安全保障条約改定の署名50周年にあたって、日米の外務・防衛担当の4閣僚が共同声明を以下の通り発表した。首脳共同声明とならなかったのは、在日米軍基地問題等において信頼関係の構築が困難な状態であったため見送られてる。前日に発表された鳩山首相の声明と併せて読むと官僚の作文の特徴である「整合性」と「概要と詳細」の構図が読み取れる。外務省および防衛省官僚による共同作業としては現時点では成功裏に推移し、今後5月までに策定される基地移転問題をリードすることになろう。「同盟に対する国民の強固な支持を維持していることを特に重視し」、その方向性の中で戦略・施策の構築や世論の形成が企図されている。
 また、この声明のなかで明示されている「脅威」は、それらしく修辞されているものの「中国」、「北朝鮮」、「テロ」、「海賊」、「自然災害」となっている。鳩山首相の指向する「中国との関係強化」はその補完するものであるが、日米安保条約の存在を前提にしては、優先順位は逆転するものではない。鳩山首相とオバマ大統領との共同声明としなかったのは前述のニュアンスによるものと理解するが、穿った見方をすれば、今後の各首脳の退任を織り込んで、普遍的な関係強化を官僚的普遍性において担保しようとするものとも思える。

 (共同声明全文)
 日米安全保障条約改定の署名の50周年に当たり、日米安全保障協議委員会の構成たる閣僚は、日米同盟が日米両国の安全と繁栄とともに、地域の平和と安定の確保にも不可欠な役割を果たしていることを確認する。
 日米同盟は日米両国が共有する価値、民主的理念、人権の尊重、法の支配、そして共通の利益を基礎としている。日米同盟は過去半世紀にわたり、日米両国の安全と繁栄の基礎として機能してきており、閣僚は日米同盟が引き続き21世紀の諸課題に有効に対応するよう万全に期して取り組む決意だ。
 日米安保体制はアジア太平洋地域における繁栄を促すとともに、グローバル及び地域の幅広い諸課題に関する協力を下支えするものである。閣僚はこの体制をさらに発展させ、新たな分野での協力に拡大しておくことを決意している。
 過去半世紀の間、冷戦の終焉及び国境を越えた脅威の顕在化に示されるように、国際的な安全保障環境は劇的に変化した。アジア太平洋地域において不確実性・不安定性は依然として存在しており、国際社会全体においてもテロ、大量破壊兵器とその運搬手段の拡散といった新たな脅威が生じている。
 このような安全保障環境の下、日米安保体制は引き続き日本の安全とともにアジア太平洋地域の平和と安定を維持するために不可欠な役割を果たしていく。閣僚は同盟に対する国民の強固な支持を維持していくことを特に重視している。
 閣僚は沖縄を含む地元の基地負担を軽減するとともに、変化する安全保障環境の中で米軍の適切な駐留を含む抑止力を維持する現在進行中の努力を支持し、これによって安全保障を強化し、同盟が引き続き地域の安定の礎石であり続けることを確保する。
 日米同盟はすべての東アジア諸国の発展・繁栄のもととなった平和と安定を東アジアに提供している。あらゆる種類の顕在化する21世紀の脅威や地域およびグローバルな継続的課題に直面する中、日米同盟は注意深く、柔軟であり、かつ対応可能であり続ける。この地域における最も重要な共通戦略目標は日本の安全を保障し、この地域の平和と安定を維持することである。日本及び米国はこれらの目標を脅かし得る事態に対処する能力を強化し続ける。
 日本と米国は北朝鮮の核・ミサイル計画による脅威に対処するとともに、人道上の問題に取り組むため、日米で緊密に協力するとともに6者会合を含む国際的な場を通じて日米のパートナーとも協力している。
 閣僚は中国が国際場裡において責任ある建設的な役割を果たすことを歓迎し、日本及び米国が中国との協力関係を発展させるために努力することを強調する。
 日本及び米国はまた、アジア太平洋地域における地域的協力を強化していく。日本及び米国はこの地域及びそれを超えて自然災害に対処し、人道支援を行っていくために協力していく。日本及び米国は変化する安全保障環境の中で、共通の利益を有する幅広い分野において、米軍と日本の自衛隊との間の協力を含め、協力を深化させていく。
 閣僚はグローバルな文脈における日米同盟の重要性を認識し、さまざまなグローバルな脅威に対処していく上で緊密に協力していく決意であることを改めて確認する。日本及び米国は必要な抑止力を維持しつつ、大量破壊兵器の拡散を防止し、核兵器のない世界の平和と安全を追求する努力を強化する。
 日本及び米国は国際テロに対する闘いにおいて緊密に協力することも決意している。日本と米国による現在進行中の海賊対処に関する取り組みと協力は航行の自由と船員の安全を維持し続けるために不可欠である。
 日米安保条約改定署名50周年に当たり、閣僚は過去に日米同盟が直面してきた課題から学び、さらに揺るぎない日米同盟を築き、21世紀の変化する環境にふさわしいものとすることを改めて決意する。このため閣僚は幅広い分野における日米安保協力をさらに推進し、深化するために行っている対話を強化する。
 日本及び米国は国際的に認められたあ人権水準、国際連合憲章の目的と原則、そしてこの条約の目的、すなわち相互協力及び安全保障を促進し、日米両国の間に存在する平和及び友好の関係を強化し、民主主義の諸原則、個人の自由及び法の支配を擁護することに改めてコミットする。


 

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