2010年1月19日火曜日

日米安保改定50年に寄せて

 鳩山首相が19日、日米安保条約改定署名50年にあたり以下の談話を発表した。

 ☆★☆★☆★☆★☆

 日本と米国との間の相互協力及び安全保障条約(日米安全保障条約)は、1960年1月19日にワシントンで日米両国の代表によって署名が行われた。本日はそれから50年の節目を迎える日だ。
 日米安保体制は我が国の安全のみならず、アジア太平洋地域の安定と繁栄に大きく貢献してきた。我が国が戦後今日まで、自由と民主主義を尊重し、平和を維持し、その中で経済発展を享受できたのは、日米安保体制があったからと言っても過言ではない。
 過去半世紀の間、冷戦の終結や9・11テロなど、世界の安全保障環境は大きく変化したが、我が国をとりまく安全保障環境は北朝鮮の核・ミサイル実験に見られるよう厳しいものがある。こうした中、現在及び予見し得る将来、日米安保体制に基づく米軍の抑止力は、核兵器を持たず軍事大国にならないとしている我が国がその平和と安全を確保していく上で、自らの防衛力と相まって引き続き大きな役割を果たしていくと考える。
 また、日米安保体制は、ひとり我が国の防衛のみならず、アジア太平洋地域全体の平和と繁栄にも引き続き不可欠であるといえる。依然として不安定、不確実な要素が存在する安全保障環境の下、日米安保条約に基づく米軍のプレゼンスは、地域の諸国に大きな安心をもたらすことにより、いわば公共財としての役割を今後とも果たしていくと考える。
 こうした認識に立ち、私は50周年を記念する年にあたり、日米安保体制を中核とする日米同盟を21世紀にふさわしい形で深化させるべく米国政府と共同作業を行い、年内に国民の皆様にその成果を示したいと考える。

 ★☆★☆★☆★☆★

 かなり完成度の高いコメントである。官僚の作文ではなく、首相自身の信念と本心に基づくものであることに少なからぬ懸念はぬぐえないが。

 在日米軍基地については、日米安全保障条約に基づく安全保障体制の「要」となっている。ただし、1991年のソ連崩壊による冷戦終結や2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件後の安全保障環境の変化、軍事技術の進歩に対応し、米国防省は冷戦型の米軍配置を世界的に見直す作業に着手。その一環として自衛隊と在日米軍の役割分担や在日米軍基地の再編について協議を重ねてきた。
 その後、日米両国は米国防総省で2005年10月29日、外務・防衛担当の4閣僚による日米安保協議委員会を開催し、在日米軍と自衛隊の再編について基本的な考え方や当面の二国間の安全保障・防衛協力で態勢強化に不可欠な措置をまとめた中間報告「日米同盟:未来のための変革と再編」で合意、再編計画の大枠を固めた。報告書は、自衛隊と在日米軍の連携強化と、基地負担の軽減対策を盛り込むと謳っている。

 首相が言う「日米安保体制を中核とする日米同盟の深化」の方向性は、「アジア太平洋地域における平和と繁栄に引き続き不可欠である」在日米軍のプレゼンスによるところが大である現状認識をしっかりと共有し、その50年の協働の実績に基づく「信頼」をさらに強化することにある。つまり、これをもって「トラスト・ミー」が正しく意味するということである。

 ただし、環境変化や軍事技術の進化も大きく考慮していく必要があり、1995年配備以降、ボスニア、アフガニスタン、パキスタン、イラクおよびイエメンで作戦に参加した「無人攻撃機プレデター」などの有効性を勘案すると、大型原子力空母や海兵隊を中核とした陸海同時展開などの軍事戦略は古臭いものとなってしまうかもしれない。当然、戦争を肯定的に推奨する人はいないわけでこのような効果的抑止力を維持しつつ、イデオロギーの対立や国益のぶつかり合いがあっても交渉と妥協によって平和的に解決していくという安全保障の王道も忘れてはならない。

 つまり、日米安保条約の第二条には、「締結国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによつて、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締結国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。」とあり、単に軍事に基づく同盟関係という位置づけから昇華させ、国際社会における平和の増進、友好関係の促進を経済的な協力をもってあたるという成熟した関係を目指している。

 今後は朝鮮半島の軍事・経済社会的な安定も意識し、日・米・韓の安全保障条約も視野に入れた国際戦略を策定していかなければならない。このトライアングルにおいて、社会主義国である中国や北朝鮮など不安定要素を効果的かつ相互扶助的に緩和していくことになり、三国それぞれのメリット、「三方一両得」の構図を作っていくことで、はじめ21世紀にふさわしい安全保障体制の深化ということができる。  

0 件のコメント:

コメントを投稿